形、業前は違えど「刀法」は皆同じ
林崎甚助源重信公により考案、体現化されたものが居合術ですが、その後も名のある侍たちが、己の剣に取り入れます。侍は元々、古くは中条流や陰流、ト伝流など、何かしらの剣術を修行していますから、林崎流居合術を取り込む事により、さらに新しい剣術が生まれたであろう事は、誰でも推測できます。
土佐に伝わった英信流を遡ると、田宮流などをたどり、長谷川主税助英信先生、荒井勢哲先生を経て土佐藩の林六太夫守政先生に伝わり、土佐藩に居合術が入ってきました。
この林六太夫守政先生は、神陰一刀流を開いた陰流の大家、大森六郎左衛門先生の門人であり、現代の大森流の業が土佐の居合には加えられました。英信流の正座の業が、大森流の業です。
このように居合術は、多くの流派に分かれてそれぞれで磨かれ、理合の異なった多くの業が形として伝わります。
理合とは想定している形の意味、シナリオのようなものです。
流派の数だけ異なった形が存在し、それぞれ全く別の剣術に見えてしまうかもしれません。
しかし、形の本当の意味はカタチではなく、中に込められている、実戦に即したあらゆる刀の使い方、いわゆる「刀法」と言われています。
理合にあった「刀法」が卓越すれば、形は自ずと活きてくるのです。
当流が所属している、全国居合道連盟の居合大会や称号段位審査会では、土佐直伝英信流や無双直伝英信流、夢想神伝流、無双神伝流、荒木流など様々な流派の範士の先生方が、様々な流派の剣士の業を審査をします。
「形が違うから、良し悪しがわからないのでは?」
「流派の垣根を超えた共通の業が必要なのでは?」
と疑問に感じる人もいらっしゃるかと存じますが、全くそんな事はありません。
審査をされる先生方は、「形の正確さ、完成度」ではなく「刀法の理解と練度」を見ているのですから。
カタチの正確さでは無く、理合を理解した上での刀法の研鑽。
古流居合術の鍛錬とはそういうものであると、土佐の先生方から、また師匠から教わっています。
絵と文 : 東京支部 杉浦
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